「ゾウの時間ネズミの時間」
著者:本川達雄
発売:1992年
蝉の一生は7日間(正確には幼虫の期間が数年ある)と言われています。
子どもの頃の私からすれば、なんと短い命なんだろうと、蝉って可哀想な生き物だなと思っていました。
それから大人になって、しかし果たして蝉にとっての7日間は人間の7日間と同じなのだろうか、このように考えるようになりました。
時間の感じ方が違えば、あるいは蝉の7日間は人間にとっての80年に値するかもしれない。
蝉は決して可哀想な生き物ではないのかもしれないと。
この本のタイトルを見た時、私のそんな疑問に答えてくれるかもしれないと、興奮したのを覚えています。
実際、本の中身もそういった疑問に答えてくれるようなもので、概ね満足でした。
生物学の専門家が書かれた本ですが、生物学に明るくない私のような一般人でもすらすら読む事ができました。
そんな本作にも面白かったこぼれ話があります。
動物は島という隔離された空間に住んでいると、大きいものは小さくなり、小さいものは大きくなるそうです。
これを古生物学では「島の法則」と呼んでいるとか。
例えばゾウを島に隔離するとどうなるか。
高さが1メートルくらいで、仔牛ほどにしか大きくならないとか。
そしてネズミ。
しかしこの場合は逆に大きくなる。
これは捕食者、つまり敵が少ない環境が影響するからだそうです。
私達の知っているゾウは、生き残る為に大きくなるという進化を経て今の姿になりました。
ネズミも、生き残る為という意味では同じ。
しかしネズミの場合は、敵から見つからないように小さく進化する事で生き残る事ができました。
つまり、敵が少ない環境では生き残る為の進化の必要がないという事。
島に住む動物は、適正サイズ(その動物本来のサイズ)なんじゃないか、という話です。
動物って面白いなと、改めて思わされた話でした。
そういえば、キリンの首が長いのは、高いところに生えている草(木の葉とか)を食べる為、という話を聞いた事があります。
地面に生えている草にはライバルが多いですからね。
高いところならライバルがいないので、いつでもどこでも食べ放題です。
そんなキリン。
島に隔離すると、地面の草でもライバルがいないので首を長くする必要がないかもしれません。
首の短いキリン。
ちょっと想像しづらいですが、それがキリンの本来の姿なのかもしれませんね。
前回、希林さんの話だったので、最後はキリンの話をしてみました。
それではお後がよろしいようで。
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